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日本は人類の貴重な選択肢
 アインシュタインが絶賛した日本の美、それは人々が自然と調和する美しさだったように思う。その日本の大切な個性が欧米の価値観を取り入れることで消えようとしている。

 欧米で、未婚の母から産まれる子供が3割に達していた15年前、日本は1%台だった。家庭崩壊に揺れる先進国社会にあって日本は奇跡の国、人類の可能性を探る選択肢として貴重な存在だった。ニューヨーク市の公立学校の3分の2が3年前制服を採用した。高校を卒業するとほぼ全員が読み書き出来るようになる日本の学校教育に学ぼうと研究した結果だった。民主党、共和党とも過去3回の大統領選挙で「伝統的家庭価値観を社会に取り戻すこと」を最重要公約に掲げた。発達心理学者たちは、団地で川の字になって眠る日本の親子を、日本の成功の秘密ではないか、と全米向けのテレビ番組に紹介していた。子供が親に殺される確率、妻が夫に殺される確率、少女が近親相姦で犯される確率、人生の質を左右しその国の幸福のものさしを反映する統計において日本は奇跡的に「いい国」だったのだ。

 今年アメリカで産まれる子供の20人に1人が一生に一回刑務所に入り、犯罪者を全員捕まえていたら二週間に一つ刑務所を作っても追い付かないと言われている。犯罪を減らすため母子家庭から子供を取りあげ政府が孤児院で育てよう、という法案が連邦議会にかけられたのが八年前。そして、この法案に賛成していた当時の下院議長が、イラク戦争を決定づけた国防最高諮問会議の5人のメンバーの一人で、世界情勢を決定付ける立場にあるのだ。こういう現実をなぜ日本人は見ようとしないのか。すでに「アメリカンドリーム」「社会進出」などという言葉に代表される、欧米型の強者に都合の良い幸福論に支配され始めているからだろう。考えてみてほしい、先進国と言われる国で「欲を捨て、野心を捨てる」ことに幸せがあると説いた仏教を文化の土譲として持っていたのは日本だけだった。「欲を捨てる」という行為が、「親心」と重なっていたから、子育てを通して「親心」が社会に育ってきた。親心とは弱者に優しい社会を作ろうとする心。これが社会にモラル・秩序が生む。それがいま急速に壊れようとしている。

 幼児という絶対的弱者に関わり人間は善性を引き出される。強者である大人達から一定の善性が引き出されない限り幼児は生存できない。もう一歩進めると、「宇宙が我々に自信を持って0歳児を与えた」のは人間が引き出されるべき善性を持っていることの証しである。

 グローバリズム、国際化とは国境を越えて利潤や利権を追求しようとすること。国際人とは、国境を越えて欲を追求しようとする人。こんなことを国の目標にしてはならない。文化や習慣の国際化は欧米化、日本の無国籍化に他ならない。これでは人類の大切な選択肢が消えてしまう。子供の幸せを考え孤児院で育てようなどという論議が国会でされるようになる前に、日本は、欧米とは違った独自の幸福論を磨き続けなければならない。
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